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自分を取り巻くすべての環境に感謝をする事

Q.このお仕事を始められたきっかけは何ですか?

料理をする事が好きという事が第一でした。
色々な食材からメニューになっていく、その過程が面白くて楽しかったんです。
大きく言ってしまうと料理が一つの作品みたいなものだと思っています。

自分の表現した「料理」という作品をお客様に食べていただいて、「美味しかった」と感動をしてもらえる事が作り手としての喜びだと感じています。

Q.先代のお父様の代からお店をやられていて、具体的にこういった道に入ろうと思ったのはいつ頃ですか?

小学校くらいの頃から、店の手伝いで皿洗いや調理補助をしていました。
親も喜んでくれてましたね。

それはまた自分に跳ね返ってきて、「良い事をしているんだ」という感覚がありました。
これで喜んでもらえるなら、もっとやっていきたいと思ったんです。

なので、子供の頃からテレビを見ているよりも店の手伝いをしている方が楽しい子供でした。
昔から料理番組などはどれだけ見ても飽きなかったですし、「食」に関しての興味はずっとありました。

漠然としたものではありましたが、小学生にあがった頃からそういった思いはあったんだと思います。

これは余談なんですが、小学校で埋めたタイムカプセルでも「将来僕はお店をやるんだ!」という夢を残していたんですよ。
自然なのか、必然だったのかはわかりませんが、ずっと飲食業である親の背中を見てその環境で育ってきた事が大きいと思います。

Q.具体的にこの世界に進んだのはいつ頃ですか?

進学で名古屋の大学に行き、就職の進路を決める時期に両親と相談をしました。
そこで大学を卒業したらこの店を継ぎ「やる」という意思を固めました、当時二十歳でした。

Q.名古屋のお蕎麦屋さんで修行をした事があるとお伺いしましたが、どのような形で修行されたのですか?

大学を卒業しまして、2年間ほど名古屋で修行をしました。
家に戻り店を継ぐ事が前提で期限付きの2年間ではありましたが、本当に色々な事を学ばせていただきました。

修行する事になったそのお店を選んだ理由は簡単でした。
「お店の雰囲気」と「味」です。自分が継ぐ店と店構えの規模感が近くて尚且つ「美味しい」と思うお店だったからです。
ここだったら絶対に勉強になると思い選びました。

通常の就職活動では中々ないと思いますが、「飛び込み」で経営者さんと話をさせていただきその場で採用していただきました。
その2年の修行を経て、店を継ぐために実家へ戻りました。

当時も迷いというものは別に無かったと思います。
やって当然の進むべき道として、選択は自分の中にはありませんでした。

Q.家に戻ってからはどういった思いでスタートしましたか?

これはどこのお店でも同じだと思いますが、「流儀ややり方」はそれぞれ必ずあります。
まずそれを完全にマスターする事を意識しました。

それを完全にこなせる様になってから、新しい考えだったり新メニューであったりと自分の「色」というものを出していきたいと思っていました。

外に出て修行したことで、違うやり方や考え方の2種類を吸収出来ました。
それが自分にとって何が最善の方法なのか?ということを、今まで学んだ2人のオーナーさんの考えと自分の考えでよりよい答えを導き出せるように常に考えています。

修行先での経験がここで大きく活きています。
将来、自分は店を継ぐために修行したいと伝えた上で採用して頂いたので、経営をする為の教育・心構えをしっかり叩き込んでもらえたと思っています。

何より修行時代はとても楽しかった、と今でも振り返ります。
自分は将来「経営者」になるんだという思いでの修行でしたが、その反面同時に従業員として働いて従業員としての色々な意見や考えを知ることが出来ました。

また、修行先の親方の人柄も大変尊敬できる方でした。
例えば、ミスや間違いに対して普通だったら怒ってしまいそうな所はありますよね?
それを感情をコントロールして怒らずに、後から諭すようにわからせてくれる、という人でした。

怒られる人に対しても慮って言い方や言葉を選んで伝えてくれました。
自分が同じ立場になったら同じことができるだろうか?と考えましたし、そういった「人」としても勉強・成長をさせていただきました。

現在家族経営をしていますが、家族だからこそ言えない事や逆に言い過ぎてしまったりという事もあります。
そういった時には修行先で学んだ経験や親方の教育を思い出すようにしています。

Q.他にも尊敬する方はいますか?

具体的にこの人というよりは、「心の広い人」は大体尊敬出来ると思っています。
そして少なくとも人の上に立つ人はそういった人であるべきだと考えます。

Q.このお店の料理でこだわっている、これだけは負けないというものはありますか?

まずは「いい食材」です。そもそもの料理をする前の大前提で大切なものです。
次に「料理」として完成する途中の「色どり」や「食感」、「栄養価」をそれぞれMAXになるように提供していくという事です。
味にたどり着くまでの工程全てが「料理」だと思っています。

また、食材は出来るだけ地産地消でと思っていますが、それだけでは中々全部がいい食材というわけにはいかないんです。
だから、素材は研究を重ね厳選した素材を使わせていただいております。

特にそば・うどん・きしめん・らーめんは全て粉の状態から自家製麺をしています。
なので、使う粉の種類やブレンドは全てオリジナルです。
麺という物は大変デリケートなので、季節ごと湿度や温度、塩加減を調整し、五感をフルに使い作り上げる自慢の自家製麺に仕上げます。

もう一つのこだわりは、そばつゆに欠かせない「出汁」です。
枯本節をメインにして、ムロやサバの濃厚な風味を配合したオリジナルの出汁なんです。
旨味成分・イノシン酸も多く含まれ、その味は奥深くも上品でまろやかに仕上げています。

実際、麺の粉の種類から出汁の素材というものは数えきれないほどの種類があります。
出汁の味が変われば当然麺の味も変えなければなりません。これは一生研究だと思っております。

「麺」から「つゆ」まで食材が持つ味を100%引き出せるように日々技術を磨いています。

Q.こちらのお店で自慢の一品は何ですか?

看板商品でもありますが「鴨ざるそば」と「つけめん」は世代を問わず、1年中注文していただける自慢の一品です。
「鴨ざる」はお子様からご高齢の方まで幅広く支持していただいております。

また「つけめん」は最近『好き』という人も増えてきました。
当店オリジナルの煮干し出汁ベースがご高齢の方にも受けておりまして、これも幅広い方々にご愛顧いただいております。

Q.今までやってきた中で苦労したことは何ですか?

日本全体の経済が不況である中で、特に個人商店の方々は皆さん痛感していると思います。
今まで来てくれていた常連さんの頻度が減ったり来なくなってしまったり、安くて量の多いチェーン店さんやコンビニにそのお客さんが流れてしまっていた、という事もありました。

その中でチェーン店では出せない当店だけの『オリジナル性』を模索してきました。
これも結果は簡単に出ないと思っていますが、結果として結びついているのかどうかを今でも立ち止まっては追及し続けています。

例えば、『毎月1品新メニュー』を出していた時期もありました。
そば屋なりの『イタリアン』を考案してみたり、また今あるメニューをコラボレーションして新しい一品を生み出してみたりと。
その時に好評いただきレギュラー入りや季節メニューとして今も残っているものもあります。

今まで培ってきた「三浜屋」としての味はもちろん大事にしていますが、ただお客様にとって飽きのこないお店である為に『変化』する事も大切だと思います。

Q.今後お店をどのようにしていきたいですか?

インターネットでも日本の『食文化』が多く取り上げられるようになってきました。
日本だけでなく海外の方にも日本の食の魅力を伝えたいと思っています。

そば・うどん・きしめんやラーメンにしても『出汁』の旨味の魅力は是非味わっていただきたいです。

2020年のオリンピックで海外旅行者の流入が増えると思いますので、そういった方でもお越しいただいて楽しんでいただけるお店にしたいです。
そのためにも、注文に使える外国語の翻訳シートを置いています。
滝川クリステルさんの『おもてなし』ではないですが、日本のお店の接客や行き届いた所作の全てが文化としてお伝えできればと思います。

Q.次世代の経営者に向けてアドバイスをお願いします。

目的を達成する為には、苦労して成す方が喜びというものはその分大きくなります。
また、丁寧に仕上げた仕事というものは当然評価されますしそこに価値があるんです。

日本人には昔から根付く勤勉さと良いものを作ろうとする『芯』があります。
自分を取り巻くすべての環境に感謝をする事。そして他人の喜ぶことを考えて、根気よく行動すれば成功を収めることが出来ます。

そば処 住吉三浜屋
静岡県浜松市中区住吉5-1-2
JR東海道本線 浜松駅バスターミナル13番乗り場[50]系統「青少年の家入口」下車 徒歩約1分
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