お客様の想いを形にする職人であり、アドバイザーでありたい
Q.今のお仕事を始めたきっかけは何ですか?
父がこの仕事をしており家を継ぐ為に働き始めたのですが、1年経った時に「このままではいけないな」と思い、考えた道が2つありました。
ひとつは大阪で技術の修行をすること。もうひとつが海外で経済の勉強をすることでした。
私はいくら良い服を仕立てる事が出来たとしても、それをアピールすることが出来ないと意味が無いと考え、アメリカでファッションの流通経済とマーケティングを学ぶことにしました。
学校を卒業し浜松に戻って来た後も、天皇陛下のお召し物を仕立てていらっしゃる東京の「金洋服店」という仕立屋さんが行っている私塾に通って勉強をしました。
「金洋服店」の服部先生という方がとても柔軟な発想を持っていらっしゃって、私が思い描くスタイルも否定することなく、やってみなさいと教えて頂きました。
服部先生の私塾に通い、私の可能性が凄く広がったと思います。
技術もそうですが、考え方としても教わった部分は大きかったですね。
すごくいい先生でした。
Q.最初の頃はどんな状況でしたか?
始めて10年は私自身が居なくても仕事が回る状態で、むしろ足手まといだったので辛かったですね。
父の仕事を見て覚える必要もあり、よく父から見られていると仕事がやり辛いと言われました。
父と全く同じやり方だけをやっていれば、もっと早く仕事が出来ていたと思います。
ただ、私は以前にイギリスの「サヴィル・ロウ」という洋服の聖地に行ったことがありまして、今まで日本で見てきたスーツとは全く違うシルエットの格好良さを感じました。
その時に自分が仕立てるスーツはもっと格好良く作りたいという気持ちを持ったんです。
日本の裁断書だけではなくイギリスの裁断書を取り寄せて、日本のスーツと何が違うのか調べたり色々試したり、10年間メインで仕事が出来ない間に勉強も沢山させてもらいました。
メインで仕事場に立たせてもらえるようになったのは2.3年前からですが、色々と勉強出来たおかげで現在は父のやり方、服部先生のやり方、イギリスやドイツのやり方、と自分で試してみて良いところを取り入れて裁断ができるようになりました。
そうやって仕立てたスーツをまた何度も注文に来て頂いたり、喜んでもらえると嬉しいですね。
Q.ターニングポイントはありましたか?
父の代は、なるべく値段を抑えてオーソドックスなシルエットのものを扱う事が多かったんです。
縫製や着心地が良いのは大前提ですが、お客様が他の大手さんと比べるとしたら実際に着てみないとわからない部分です。
では仕立屋のメリットは何かと考えた時に、自由に仕立てが出来るところだと思ったんですね。
その強みを目一杯活かして、私の代ではオーソドックスなシルエットのものを扱いながらも、お客様のイメージに応じてシルエットや生地にこだわったものを手間をしっかりかけてお作りしたいと考え、取り組んでいます。
Q.お店の経営する上での理念はありますか?
デザイナーさんは自分の想いを形にするのが仕事ですが、私は仕立屋ですのでお客様の想いを形にすることが仕事ですね。
尚且つお客様の社会的立場とお好みに応じ適したものを提案が出来るように、私はお客様の想いを形にする職人であり、アドバイザーでありたいと思います。
あとは、やっぱり常に誠実でありたいですね。
Q.今後どんなお店にしていきたいですか?
来年で「テーラー新屋」はこの場所でお店を構えて50周年になりますが、次の50年に向けてのビジョンを考えていきたいです。
地域により貢献出来ればと思っていますし、新しい展開に向けて来年は催しも考えています。
これから何が出来るのか、模索している最中です。
今後もお客様のお体や社会的立場にあった良いスーツを作っていきながら、ご相談・ご要望にも出来る限り答えていきたいですね。
今年はお客様のご注文により地元の遠州綿紬を使用したものや、軍服を作ったりもしました。
現在はバリアフリーのご注文も頂きまして、車椅子で座った時に恰好良く見えるスーツを作っています。
私が出来る事は精一杯やらせてもらいます。
Q.これを読んでくれている次代の経営者に一言お願いします。
私は自分で起業をしたわけではありませんので、あまり偉そうな事は言えません。
ただ、単純なことですが言われたことはやる。やることはやる。期日は守る。誠実にやる。
という点は心がけていますね。誤魔化しは相手に伝わります。
常にお客様が何を求めているか?を考えて、独りよがりにならない、自分の価値観を押し付けないように気を付けています。
テーラー新屋
静岡県浜松市中区利町305-13新浜松駅(遠鉄 鉄道線) より779m/徒歩10分
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