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一つのチームを作ることが如何に大変なのか

Q.今のお仕事を始めたきっかけは何ですか?

16年前に、ショッピングセンター内のテナントの事業部長として浜松に来ました。
そのショッピングセンターの当時の社長さんなどには良くして頂きまして、ショッピングセンターの経営の裏側まで教えてもらったこともありました。

家族ができたり、自分のことを必要としてくれた会社もあったので、こちらで独立しようと思ったんですね。
独立を決めた理由は2つあります。

1つは、当時はチェーン店のスーパーバイザーの管理の仕事をしていたのですが、チェーン店のスタッフの人が個人店の人達に「どうせ料理も出来ないんだろ?」と言われてしまうことがあったんです。

そのチェーン店のスタッフの中の1人に「このままやっていても、自分たちはずっと現場にいないといけない」、だからと言って「現場にいても手に職が付くわけではない」と相談されたんです。
チェーン店でも個人店でもそんなことは関係なく、サービス業としてお客様にとって意味がある事、価値があることをしっかり伝えれば個人店出身だろうとチェーン店出身だろうと関係ないよという思いでした。

チェーン店出身の人たちは、経験によるトラウマみたいなものがある人もいます。
そんな時にスーツを着て人の上に立っていた自分が、独立してやっていたら自分達にもできると分かってくれるだろうという事です。

2つ目は浜松に来た時に先輩たちに言われたのが「浜松を外から見てきた人の目線をもっと発信して、良くしてほしい」「中にいるとそれが当たり前になってしまうので、本当なら変えられることも変えられなくなってしまう。」「外から来た人がおかしいなと思うことをもっとこうしたらよくなるのに、と変えていって欲しい」と言われたことがあります。

自分たちが独立することで、そういう場所が1つでも出来る・増えるんじゃないかなと思ったからです。

Q.一番苦労した点は何ですか?

スタッフの人たちと一つのチームを作ろうというのが大変だったと思います。

サラリーマン時代は組織があって、自分はその組織を運営する側だったんですね。
例えばイベントがある時に、チェーン店のようにたくさんの人の能力を使える会社はイベントがしっかり動くんです。

いざ独立して組織が小さくなると、「こういうことができたはずなのに」という事が一切できなくなったり、スピードが落ちたりします。そうするとお客様へのサービスに繋がってしまいますし、自分たちの収益にも影響してしまいます。
そういう部分が出来ていないのが苦労した点です。

チェーン店では管理部隊や企画部隊がいたり、デザイナーさんやバイヤーさんがいて、みんなでやってこれました。
それが、一つ一つのことをしようにも自分の体は1つしかありませんし、そういうチームを作ろうにも皆が経験があるわけではありませんし、その中で一つの目的を持つことが大事であり大変な事でしたね。

Q.7年で3店舗(なごみ、園次、別格)というと、とても会社の発展のスピードとしては速いなと思います。
そこまで出来たポイントはありますか?

ケンカを売るわけではないのですが、誰でもできると思うんです。
見た目に店舗数が多いのは、凄いことなのかもしれません。1店舗目が出来た人は、2店舗目も出来るはずなのです。
ただ、1店舗から2店舗に増やしたところで、自分の価値は変わるわけではないんです。収入が劇的に上がるかと言えば、それも違う。

自分たちのスピードは速いとも遅いとも思っていないんです。
自分のやり方だけに拘ってしまう人は、たぶん何年経ってもできないです。
自分の仕事を、3店舗なら3店舗と割り切ってやっていくことが大事なのです。
出来る事をちゃんとやっていくことを続ければ出来ると思います。

店舗数の問題ではないんです。1店舗目があって、2店舗目も同じ業態だと立地などの問題もあるかもしれませんが、自分たちのようにそれぞれ違う業態で始める場合は、1店舗ごとが勝負なんです。
毎回新しい勝負をしているだけなんですね。

店舗数はあくまで見た目の大きさなんですね。自分が何をしようとしているのかだと思うんです。それに必要なのが1店舗なのか10店舗なのか100店舗なのかという事なんです。

1店舗出来ない人が10店舗はできないですし、逆に10店舗あるから1店舗やっている人より偉くて凄いのかというとそうでもなくて、1店舗をひたむきに続けることはこの世の中で一番難しいことだと思います。
店舗数が多くて凄いねと言われるけど、自分は1店舗を何十年も続けたり何代も続くお店をやっていくほうが凄いと思います。

コツは何ですか?と言われたら、チャレンジし続けるという事だと思います。

Q.やりがいを感じるときはどんな時ですか?

経営者としてやりがいを感じるときは、従業員から前向きにやりたいことの発信があってそれを皆で動かしていこうとなった時にやりがいを感じます。

お客様に対する事で言うと、これが飲食店を選んだ理由にもなるんですが、例えば生ビール1杯を注文した時点で金銭が発生していますよね。
それなのに、そのビールを持っていくと「ありがとう」と言われるじゃないですか。

自分が元々いた業界ではそんなことはなかったんです。
お金を受け取る側が「ありがとう」と言うのは当たり前ですが、買う側が何回も「ありがとう」という事は無かったんです。

飲食店では、従業員も何回も「ありがとう」と言いますしお客様も何回も「ありがとう」と言うんですよね。
「ありがとう」という言葉は人を幸せにする言葉だと思いますし、それをお互いに言い合える場所は「飲食店」が1番だろうなと思います。それが飲食店の一人の従業員としてやりがいを感じるときです。

なので、従業員にも言うのは、コンビニの店員さんにも「ありがとう」と言ってあげたほうがいいよとも言っています。

Q.経営をするうえでやってはいけないことは何ですか?

嘘をついてはいけない。嘘をつかないといけなくなるくらいなら、嘘をつかないといけなくなるようなことをしなければいいんです。

あと、約束は守らないといけない。時間を守ることも約束を守ることです。約束が守れないのならそんな約束は初めからするなという事です。

Q.尊敬する人物はいますか?

尊敬する人は沢山います。自分が今までお世話になってきた上司の方々です。
皆さん、得にならないことでも自分の将来の為に話をしてくれました。そういう人に沢山出会えたと思っています。
夜中まで飲みに連れて行ってくれたり、色んな人を紹介してもらったりしました。

皆さん「自分たちも先輩にそうしてもらったから」と言います。なので、自分もそういう人になろうと思います。
自分が口で伝えられることは限られていますので、若い子たちをそういう場に連れていくことで、その子たち自身が感じる事が沢山あると思うんです。

なので、そういう場所を作り続けてくれたり、「こういうことをしたらどうか」と声をかけ続けてくれたりした先輩たちを尊敬しています。

そういう方々が沢山いるのも、浜松にいる理由の一つです。 皆が「浜松を良くしたい、昔の浜松を取り戻したい」と言っているので、自分もそれが出来たらいいなと思います。

先輩たちとの出会いがなければ自分もこういうことをしてもいないし、できないし、しようとも考えていなかったと思います。そういうきっかけを与え続けられる人になりたいと思います。

Q.これを読んでくれている次代の経営者に一言お願いします。

2つあります。
1つ目は、自分が本当に得たいものは何か考えてほしいです。

経営者になることで、派手な暮らしが出来たりお金を持てたり、カッコいい車に乗れることもあるかもしれません。
でもそれはあくまでその時の話です。
自分が価値として本当に欲しかったのは何なのかという事を考えてほしいと思います。

2つ目は、自分が続けられる事業をしてほしいと思います。
こういうインタビューで、必ず「辛かったことはなんですか?」と聞かれるんです。という事は辛かった話が多いんだと思うんです。

一番出来る事は、自分が欲しい価値は何なのか?お金なのか、時間なのか、名声なのか、仲間なのか。色々ありますがそれをしっかり見つめて起業してほしいです。
そして、今流行りの業界だからではなくて、自分自身が続けていきたい事業を自分の事業として選んで始めてほしいと思います。

その2つがしっかりできて浜松で始めてくれれば、浜松が1つ活性化されることになります。
そういう気持ちでやってもらえたら嬉しいですし、まず自分が歩み出すことがスタートだと思いますので、どんどんやっていって欲しいなと思います。

居酒屋なごみ
静岡県浜松市中区田町316-28
第一通り駅(遠鉄 鉄道線)より394m/徒歩5分
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