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その時代の生活様式やニーズに合わせた商品を常に考えて発信することが必要

Q.今のお仕事を始めたきっかけは何ですか?

弊社は明治11年創業の人形専門店で、私もここで生まれました。

小さいころから生活圏内に人形がありましたので、あまり深く考えずにいずれはこの仕事をするんだなという考えでいました。
レールが目の前にあったという感じでした(笑)

Q.では、大学卒業後すぐにご実家に戻られたのですか?

いえ。大学卒業後は、アパレル関係の会社に一度就職し2年間勤めました。
大学在学中から卒業後は実家に戻るつもりでしたので、永久就職のつもりでありませんでした。

人形店というのは伝統産業ではあるのですが、非常にファッション性も高いんですね。
そういった点で、その時代の最先端のアパレルの業界を体験することも必要と感じたからです。

その後実家に戻り、40歳ころから会社の中心として働き始めました。
先代社長であった父から、5年前に社長を引き継ぐ形になりました。

Q.アパレル業界での経験で役に立っていることはありますか?

今は経営者ですが、当時はもちろん従業員でしたので働く側の気持ちがわかるようになったことですね。

労使の考え方にはどうしても溝が出来てしまうものなんですね。
歩み寄ったとしても平行線になったりもします。

会社を運営する側になり、働いている方の気持ちになって会社がいい方向に行くようにできるかどうかが経営者にとって重要な事だと感じました。

Q.一番苦労した点は何ですか?

父が健在の時は、自分は店頭での業務や仕入れ商品の選定などを中心にしていました。

ところがいざ社長となると、例えば資金繰りの面や従業員さんとのコミュニケーションなど直接的な業務以外のことが増えてきました。
会社全体を見る仕事が増えてきたのが一番苦労しました。

Q.やりがいを感じるときはどんな時ですか?

人形は伝統産業ですので激しい流行のようなものは無いのですが、生活様式の変化によってニーズも多様化しているんです。
お人形の顔の好みもありますし、小さい物から大きいものまであるんですね。

そんな中でメーカーさんと打ち合わせしながら独自の商品を考案・企画して、完成したものをお客様に認めて頂いたり、気に入って頂けたときは非常にやりがいを感じます。

一部を除いて自分たちで制作はできませんので、職人さんたちに自分たちの作りたいものをどれだけ伝えて実現してもらえるかという事は難しいのですが、それが叶ってお客様に認めて頂けると嬉しく思います。

Q.経営をしていく上でやってはいけないことは何ですか?

お客様に差を付ける事です。

人形は一般的に高額商品ですよね。
その中でも数万円から数十万円するものまで様々あるのですが、どんなものであってもお客様にとっては一生に一度の買い物ですし、お子様にとってのお守りになるものです。

あくまでお祝いする気持ちが大切なんです。
すべてのお客様がご予算の範囲内で、お子様のためにいいものを選んでいただくことが重要ですので、どのお客様に対しても誠心誠意ご希望をお伺いしてベストなご提案を出来る事が必要です。

なので、お客様の選り好みをすることは一番あってはなりません。

Q.長く続くお店の伝統を守る上で、一番大事な点は何ですか?

一番怖いことは「慣れとダレ」です。いつもの仕事に慣れてしまうと、人間だれしも楽な方向に行ってしまいますので、色々な事がおろそかになってしまうのが常だと思うんです。

売っているものは変わりませんが生活様式は変わってきていますので、それに合わせてお客様のニーズも変わってきています。
その時代の生活様式やニーズに合わせた商品を常に考えて発信することが必要だと思っています。

同時に、昨今は出生率も低下していますので、お人形を買われる方も減ってきています。

そんな中で、お人形というものはお子様にとってのお守りであり、ご両親やおじいちゃん・おばあちゃんの願いのこもったものであるという、精神的な啓蒙というものも専門家として必要だと思っています。

また、今の子育て世代の方はお仕事が忙しかったりして子育てが大変であるとも言われています。
なので、木のおもちゃを通じてご来店頂いたお客様に子育てのアドバイスなどもして、地域の方との繋がりを深く持てるように心がけています。

Q.尊敬する人物はいますか?

強いて言えば、石津謙介さんという方です。日本で最初に「アイビールック」を取り入れた方ですね。
自分が大学に入った当時は、なかなか服装に執着がなかったんですね。人間見た目よりも中身だろうと。

ところが、石津さんがたまたまテレビに出られた時に「綺麗な服や立派な服を着ている人が必ずしも立派な人間という事は無いけれど、内面がしっかりしていれば自ずと着るものにも反映されてくる」という事を仰られていて、ファッションというものも自分を磨く中で考えていかないといけないと気付きました。

それ以来、石津さんの教えを念頭に置いています。

Q.これを読んでくれている次代の経営者に一言お願いします。

今は割と若い方と接することも多いのですが、経営者でもそうでなくても皆しっかり自分の夢を持っていらっしゃる方が多いんです。

自分が10年先20年先にどうなっていたいかという夢を持つことは大事だなと思います。
夢を持ってやっている方は非常に生き生きしています。仮に今は良い状況でなくても、未来に対して明るい見通しを持っています。

くじけそうな時でも前を見て、自分の未来を見つめていくことが重要だと思っています。
諦めずに頑張っていって欲しいと思います。

寿月すみたや/株式会社連尺すみたや
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